【and pictures伊藤主税プロデューサーインタビュー】子役育成 ワークショップ作品を世界配信へ

映画製作会社(株)and pictures(アンドピクチャーズ)の代表で、『デイアンドナイト』『青の帰り道』の伊藤主税プロデューサーによる映画事業は、コンテンツプロデュースにとどまらず、阿部進之介さんや山田孝之さんが賛同する俳優向けプラットフォーム・mirroRliar(ミラーライアー)の運用や、映画作りを生かした地域活性プロジェクトなど、多岐に渡っています。

10年前から運営する演技ワークショップでは「ショートフィルムを制作して映画祭や劇場公開を目指す」という形で、俳優を育成しながら50本もの作品を製作されています。

青の帰り道 (2018)
藤井道人監督、真野恵里菜

――俳優にとって演技ワークショップは演技実践の場としてだけでなく、監督やプロデューサーとの繋がりや情報を得られるチャンスです。でもワークショップは無数にあり、選び方に苦戦することも多いですね。

全国に俳優を目指している人、素晴らしい俳優が沢山います。でもその中で、残念ながら芸能界特有の夢を利用した商売があったり、映像コンテンツを作る目的ではなく、ビジネスとして高額なワークショップがある。お金に余裕がない家庭だと生活も困窮するし、映像コンテンツを作る知識も得られず、身にならずに苦しい思いをしている人たちが非常に多いと思います。

ちゃんとやっている所でも学ぶだけで、チャンスや繋がりがないとか、オーディションはあるけど学べないという所が多くて、僕は学びと繋がりの、両方が必要だと感じていました。自分が俳優活動をしていた時に「こういうワークショップがあったらいいな」とか「こういうことを教えたらもっと身になるのに」と俳優仲間と話し合っていた経験はすごく大きかったですね。

2010年にPerforming Academy(パフォーミングアカデミー)を設立しました。演技を勉強しながら、ワークショップの方々を中心にキャスティングをして、ショートフィルムを製作し、映画祭や劇場公開を目指すという形のワークショップです。

現状の長編映画のキャスティングの傾向を見ていると、才能があっても、新人だとなかなかキャスティングされづらい状況にあります。じゃあ俳優や女優を目指す人たちはどうやってチャンスを掴んでいくのか。僕は大きな仕事や役を取ることが全てプラスになる訳ではないと思っていまして、実力が伴ってから良い仕事をするべきだと思っています。準備が出来ていないのに大役を任されても「芝居がまだまだだったね」って悪い評判が広まると、せっかく役を掴んでも勿体ない。

ショートフィルムなら撮影日数も少ないし制作リスクも少なく、新人でも主演を張れるというのに興味を持ちました。小さい映画でも主演・メインを背負って、立ち振る舞いや作り方を学べば絶対に将来のためになるし、プロデューサーやキャスティングも「長編映画のどこどこに出ていました」って言われるよりも「10分のショートフィルムで主演をやったので見て下さい」と言われた方が見やすいですよね。

平穏な日々、奇蹟の陽 (2014)
榊原有佑監督、有村架純

正装戦士スーツレンジャー (2018)
上田慎一郎監督、石井貴就

Performing Academyで製作したショートフィルムは50本以上、半分は映画祭に出品しています。

上田慎一郎監督
『正装戦士スーツレンジャー』は、NEW YORK JAPAN CINEFEST 2019選出。
代表作『カメラを止めるな!』

榊原有佑監督
『平穏な日々、奇蹟の陽』主演の有村架純さんがSHORT SHORTS FILM FESTIVAL & ASIA 2014 ジャパン部門ベストアクトレスアワード受賞。
代表作『『栞』』

門馬直人監督
『ハヌル』は、SHORT SHORTS FILM FESTIVAL & ASIA 2013 ジャパン部門「ミュージックShort」UULAアワード受賞。
代表作『『逃亡料理人ワタナベ』』

藤井道人監督
『A LITTLE WORLD』は国内外7ヶ国で上映・受賞。【メトロポリタン映画祭準グランプリ(米国)/SHORT SHORTS FILM FESTIVAL & ASIA 2012ネオジャパン部門入選/ジャイプル国際映画祭入選(インド)/EPS映画祭招待作品(韓国)/SHORT SHORTS FILM FESTIVAL inメキシコ2012(メキシコ)/キャノン CP+ 2013 特別上映/ビバリーヒルズ国際映画祭ジャパン入選/第4回ダマー映画祭観客賞】など。
代表作『新聞記者』

他に講師はこれまで、犬童一利監督(『きらきら眼鏡』)、Yuki Saito監督(『おっさんずラブ』)、『世にも奇妙な物語』の創始者・小椋久雄監督、堀内博志監督(『いつまでも忘れないよ』)、渡邊世紀監督(『踊る!ホラーレストラン』)、金井純一監督(『ちょき』)、戸田彬弘監督(『名前』)、アベラヒデノブ監督(『背徳の夜食』)など。
キャスティングの伊藤尚哉さん、杉山麻衣さんがオーディション対策を教えてくれたり、プロデューサーの僕も教えています。映画の企画製作会社が運営しているので、映画を作っている側の意見として伝えていくことが出来るし、講師が現役で作品を撮っているのでレッスンしながらキャスティングしたり、オーディションも提供出来ます。

ヘタクソで上手な絵 (2017)
上田慎一郎監督、藤野優光

2nd Memories (2019)
小椋久雄監督、伊藤悌智

――俳優は素質が重要だとも思いますが…経験やワークショップによって開花することもあると思いますか?

仕事をしていると、才能があるないという事をとても気にする方が多い傾向にあります。稀に1万人に1人とか5000人に1人の割合でいるかも知れないけど、才能があると言われた人もやっぱり純粋に努力して、感性を鍛え、技術を付けて、それが才能に繋がっている。逆に、ルックスが良くないと俳優になれないということもなくて、演じることを自分のものに出来れば誰にでもチャンスはあるし、正しいことを教える人がいればちゃんと導かれると思っています。

――俳優は素質が重要だとも思いますが…経験やワークショップによって開花することもあると思いますか?

仕事をしていると、才能があるないという事をとても気にする方が多い傾向にあります。稀に1万人に1人とか5000人に1人の割合でいるかも知れないけど、才能があると言われた人もやっぱり純粋に努力して、感性を鍛え、技術を付けて、それが才能に繋がっている。逆に、ルックスが良くないと俳優になれないということもなくて、演じることを自分のものに出来れば誰にでもチャンスはあるし、正しいことを教える人がいればちゃんと導かれると思っています。

例えば、映画は主演とメインキャストだけをやりたがることが正解ではないと思っていて。主演だけで成り立っているわけではなく、一人一人の芝居が光って成り立っているので、ちゃんと自分の個性を理解して、適材適所の攻め方をすればチャンスは広がっていくと思います。

――来月開設される子役コース・Performing Base(パフォーミングベース)や、そこで制作するショートフィルム・Base Film(ベースフィルム)が目指しているものを教えて下さい。

子役のオーディションでは礼儀正しさとか、自分の意見を言えるのか、どういう表情・感性があって台本が読めるか、演出がちゃんと聞けるかを見ているのですが、形式張ったレッスンを受けたり自己紹介を教えられていて、自分を良く見せることしか出来ていない子が多い。本来のその子の良さが発揮出来ていなかったり、芝居が出来る子がかなり少ない印象ですね。

僕がもともと教員になりたかったことにも起因していますが、子役のワークショップ・Performing Baseは《教育的要素としてお芝居をちゃんと教える》《人と出会いがある》《コミュニケーションが取れる》《俳優だけでなく人として成長できる》場所にしたい。

芝居をやっていると「何でこの台詞を言ったんだろう」とか「何でこういう行動をしたんだろう」とか人の気持ちや状況を考えるので、子どもの育成・教育としてもプラスになると思っています。本来は映画製作会社が運営している俳優育成のためのワークショップですが、その子が今後生きる上の糧にして欲しい意味が一番強く、俳優を目指していない子にも来て欲しいです。

子どもの時から監督やクリエイターと会話したり現場を体験したり、大人と一緒にチームになって一本のものを作り上げることを学んで欲しい。吸収力が良い時期に一生懸命何かを表現しようとしている大人や、才能あるクリエイターに学べるかによって、その後の何年が変わると思います。色々な講師と出会ってもらい、得意・不得意とか、自分はこういう演出が好きなんだなってことを学んでもらいたい。現役の講師たちを10名以上揃えてローテーションで教えていきます。

子役メインのショートフィルムを製作して、and pictures製作の映画と並べて映画祭に出品したり、国内外で配信する。短編オムニバス企画「Short Trial Project(ショートトライアルプロジェクト)」と一緒に劇場公開していきます。頑張って作ったものが評価されれば自信にもなるし、仕事にも繋がる仕組みを考えています。保護者の皆様にも子どもたちと一緒に学んでもらいたいと思っていて、懇親会や現場見学、映画鑑賞ツアーも開催します。

伊藤プロデューサーと、スタッフの皆さん

――今年は三吉彩花さん主演『Daughters』公開、来年には大橋裕之さんの漫画を実写化…とお忙しい中で、伊藤プロデューサーがコンテンツプロデュースにとどまらず、映画に対して様々なアプローチをするのはどうしてですか?

映像コンテンツは、監督、クリエイター、俳優が作り上げている。その人たちの才能がぶつかり合って映像文化、文化が生まれれば、人を豊かに出来る可能性を持っていると信じています。それがand picturesの企画製作のコンセプトです。

地域で映画を撮っているのも、映像コンテンツや映像文化が人を豊かにすると思っているからです。東京には多くの人がいて物や情報も溢れているけれど、同じ日本でも事業開発や地域PR、情報格差に苦戦している地域が多くあります。僕も地元に久々に帰ったら駄菓子屋や八百屋といった思い出の場所が潰れていて、とても寂しかった。元気が無い町を取材していたら、人自体に元気がなかった。

映画って文化祭的要素があるから、行政、企業、民間一体となって1つ作品を作り上げ、映像コンテンツから始まる多角的なビジネスや町のPRに繋げていければ、町や人が豊かになるきっかけになるかも知れない。そんな想いをもって日本の様々な地域で映画を撮らせて頂いています。

映画業界には根深い弱点がある。2008年に自分で長編映画を製作した時に、一本だけ映画の作り方を変えても何も変わらないということも分かりました。

それからショートフィルムや長編映画を撮ってきて、実力が足りずに負けながら、学びながら、成長しながら今の形を作って来ました。監督・俳優・プロデューサー・クリエイター・配給宣伝といったバラバラに分かれてしまっている部署が、クリエイティブや作品を中心に、映画の成功に向けて1つのチームになれば戦える。全体的に変えたいというおこがましい感覚ではなく、新しい作り方に人を集めていきたい、と思っています。

Daughters (2020)
津田肇監督、三吉彩花、阿部純子

■伊藤 主税(いとう ちから)

1978年、愛知県出身。俳優活動を経て、映画プロデューサーとして活動。映画で文化を生みたいと、映画製作会社(株)and picturesを設立。社名「○○と映画」には“映画表現は自由”という意味が込められている。

短編オムニバス企画「Short Trial Project」シリーズや長編映画を製作し、国内外映画祭で受賞歴多数。市原隼人主演『ホテルコパン』(16)、松雪泰子主演『古都』(16)、真野恵里菜主演『青の帰り道』(18)、三浦貴大主演『栞』(18)、阿部進之介主演『デイアンドナイト』(19)、池内博之主演『逃亡料理人ワタナベ』(19)ほか。公開待機作に三吉彩花主演『Daughters』(20)、大橋裕之原作/竹中直人・山田孝之・斎藤工監督『ゾッキ』ほか(21)。映画製作をきっかけとした地域活性化プロジェクトの推進、俳優向けの演技ワークショップやプラットフォーム開発で映画産業の発展を目指す。

Scroll to Top