ACT芸能進学校(A 芸)では、多感で吸収の多い時期である 5 歳〜14 歳の演技経験者や子役/俳優を志す子供たち を対象に、ユニークな大人の心構え・世界観・独創性を感じ取る特別ワークショップ「interACT」(読み方:インタラアクト) を実施。この取組に賛同頂いた1人である俳優の山田孝之氏により、「子供の個性を活かす役作りを親子で探究する」 と題し、特別講師として A 芸の生徒たちを対象にオンラインワークショップを開催、その中から代表で生徒・保護者 4 組の演技を直接”演出”する、Zoom を使った特別オンラインワークショップを実施しました。
代表の 4 組は Instagram フォロワー8000 人超の生徒や、A 芸をきっかけに演技に取り組み始めた生徒など背景は 十人十色。またその他の生徒もチャットと音声で Q&A に参加し、東京・愛知・大阪・熊本などの全国各地を繋いだ、A 芸ならではの多様なメンバーとなりました。山田氏にとっても、親子に向けた演技レッスンというのは初めてとなり、ど のような演技指導が行われるのか注目が集まりました。実際に演技指導を受ける 4 組は、1 人芝居の台本やエチュー ド(即興芝居)の基礎を学んだ生徒たちから選抜され、その場で台本を見て即興芝居を実施。そこに山田氏は、それ ぞれの生徒と親の関係性を感じとったり、生徒自身の日常生活に寄り添ったりと、1 組ずつ 20 分ほどの時間をかけて、 丁寧に演出を重ねました。生徒の思わぬ意図や工夫を目の当たりにして、山田氏のキャラクター説明やポイントが変わり、それに親子が反応する。相互作用のみられる、まさに特別なワークショップとなりました。
レポート
「親子への演出という画は面白いし、子役に最も伝えたいことではないか」という発案から内容が決まった、今回の A 芸特別ワークショップ。演技参加する生徒たちは、山田孝之氏との“共演”を前に、Zoom 画面越しにも一様に緊張と興 奮が入り混じった様子です。また、お父様やお母様のなかには山田孝之氏のファンという方もおり、これまたワクワク 感を滲ませます。
即興の台本は、「先生と生徒」のシーンが使われました。まず 1 番手として愛知在住のゆづきさん(11)がお父様と 参加。「父と娘」とは大きく異なる「先生と生徒」の関係を演じるとあって、それぞれ最初は恥ずかしさやカタさを隠せな い様子でした。山田氏は「先生のことが大嫌いだと思って話をしてみよう」と演出を加え、少しずつ「良い子のお芝居」 を崩そうとします。「台本はただのヒント。色々なパターンの気持ちの変化を考えて、演技を変えていいし、それを楽し んでいいんです」と、お父様とゆづきさんそれぞれに語りかけていました。
つづいて大阪から参加の竹内大騎さん(9)はお母様と実践。1 組目を観たあとで、「生意気な子で、先生が嫌い」を 演じようとする大騎さんに対し、山田氏は「そういうやり方もある」「なるほど、そこで表現したのか」と、1つ1つのチャレ ンジを認めながら、「喋りたくなかったら、目をみたりしないんだよね」と、あくまで例だと断わりつつ、表現方法をアドバ イス。「お芝居しているとバレないこと、本当にこういう人なんだと信じてもらうことが一番重要。『お芝居しない』と考え たほうがいいかもしれないよ、お友達とふだん喋るようにね」と締めました。
最後に登場した、関西在住のゆいさん(11)は、お母様と「先生と生徒」を演じます。山田氏からは、「先生の言葉が 気になって、目をみているところが良かった」など、つぶさに観察したコメントが続きます。自然さを伝える演出の流れ で、「母と娘」「ヘアゴムを探す」など、さらに日常に近い設定・セリフへ変更。「日頃、そんなに難しく考えて生きてない と思います。自然体が一番いいですよ」の言葉に、母娘とも大きく頷き、伝わっている様子でした。
Q&A では、子供ならではの真っ直ぐな質問だからこそ、山田氏も呼応して、普段は聞くことのできない回答が次々 と出てきます。「アドリブが上手くなるには?」 に対しては、「僕もアドリブは全然きかないんですよね」と答えつつ、こう 続けました。「ただ、しっかりと役になって、本番のカメラの前に立っていれば、何を言われてもそのキャラクターの受け 答えが出てくるので、それが結果的にアドリブになります」。「役を愛して、役を信じる」。
「オーディションに受かるコツは?」と多くの生徒が気になる質問を投げかけられると、「……コツなんかないんです 笑 台本に書かれた人が『来る』のを待っているので、落ちたとしても、たまたま合わなかっただけ。その上でコツという と、自分らしさ、本当の人間性を出してほしいと思います」。「緊張するのは自信が足りないから、練習あるのみ」「とに かく台本をよむ、ト書きにヒントがある」との言葉に、生徒たちも勇気づけられました。「台本を覚えるには、まるまる書 き写してみる方法がありますね」、「IC レコーダーを使って自分で相手の声を吹込み、掛け合いの練習ができる」など すぐに役立つ方法の紹介も。終了が迫るなか最後に 1 個だけ、と答えた質問は、「憑依系の役者さんですか?」。山田 氏は「僕は憑依系なんて存在しないと思います。特別なことじゃない。みんな芝居をしている」との答えを残しました。
今回「親子参加」にした理由として、「恥ずかしさをいかに無くすか」へのチャレンジだと山田氏は話しました。「お芝 居する上で、架空のキャラクターを作って、信じ込んで演じるということや、人に見られているということには、恥ずかし さが付き物です。親とお芝居のことを話し、キャラクターを作ってちょっと演じる時間が出来れば、恥が無くなって、他の 人とも芝居がやりやすくなる近道になるのではないかって」(山田氏)。子役としての成長に最も大事なことは親子での コミュニケーションにあるという気づきをもたらす濃密な 3 時間となりました。
【山田孝之氏コメント】
■やってみていかがでしたか?
すごく楽しかったです。楽しかったし、伝えること、教えることの難しさを痛感しましたね。自分は教えたことが無いです し、あんまり教わってもないんですよね。お芝居もそうですし、小学校 3 年生くらいの時から先生の話も聞いてないから ……。お芝居って難しく考えちゃうんだけど、役を作ることっていうのは、悩むけど楽しいことなんだっていうことを伝え たかったですね。
■俳優を目指す子供たちに向けてメッセージをお願いいたします。
本当に大変なことも悩むこともあるけど、お芝居を楽しんでやって欲しいです。僕は楽しんでやっています。役を演じ る、役を作るということって、人のことを考えるということなので、答えなんてないですし。人間関係もそうですけど、難し く考えずに、この人とフィーリングが合わないなと思っても、「この人、分からない、何を考えてるんだろう?」じゃ無くて、 「この人はそんな風に思うんだ」と役にも向き合っていけたら、楽しめるんじゃないかなと思います。
【参加者感想コメント】
● 選ばれてレッスンを受けて、存分に楽しめて良かったです。台本の演技の的確に指導を受けられて楽しかっ たです。いろんなパターンで練習しないといけないということがわかりました。いま活躍している方からアドバ イスを受けられるのは幸せでした。(竹内大騎、9 歳、大阪在住)
● 役を作らないといけないけど、この子がやるとオーバーリアクションになっちゃうので課題だなと思いました。1 つのセリフでキャラクターを変えて練習するということは、ためになりました。(竹内大騎 お母様)
● 楽しかったです。勉強になりました。お父さんが横にいると緊張するし、やりにくかった(苦笑) 自然に演技をすることというのを教えてもらったから今後活かしていきたいです。山田さんの印象は、ゾッキ の撮影で会った時と変わらなかった。(ゆづき、11 歳、愛知在住)
● 楽しかったし、勉強になりました。年齢が上がるごとに自分で練習することが多かったけど、これからは A 芸 のレッスンも親子で一緒にやっていこうかなと思いました。(ゆい お母様)
● 山田さんは、丁寧に良かったところ、悪かったところを言ってくれました。一つ一つ言葉も丁寧で考えて話して くださっているなというのが伝わってきたので、すごくよかったです。演技を難しく考えすぎないようにして楽しく お芝居をやりたいと思いました。(ゆい、11 歳、関西在住)
「interACT(インタラアクト)」とは
日本を代表するクリエイターたちを特別講師として招き、選抜生徒が参加する ACT 芸能進学校(A 芸)の特別プログラ ム。技術だけでなく心構え・世界観・独創性を感じ、自分だけのオリジナリティを生み出していくことを目指しています。 加えて、学ぶ側だけでなく教える側も、子供の成長を通して、反応し合って、気付きや学びを得るプログラムです。読 み方の「インタラアクト」は、反応しあうを意味する英単語「interact(インタラクト)」と「ACT(アクト)芸能進学校」を掛け 合わせています。
https://act-college.com/